この冬が終わる頃に
無理だ、そんなの不可能だ。
なにを言っているのか、馬鹿なのか。
無から作り出す作業が、どれだけシビアなものか分かっているのか。
それは、胃の中のものを吐き出すよりも困難なことだ。そして、作り出したデザインには、一つ一つ愛着がある。それを、ここまで育て上げといて、いらない、はないだろう。
「甲斐田くんのデザインに今更の変更が入った。他社とデザインが似てるとか、らしい。そんなわけないじゃない、うちの甲斐田がデザインしたのよ、ふざけてるとしか思えない。」
「ていうか、今から全部の変更とか無理ですよ、プロトタイプも出来上がってるっていうのに。」
どうしようか。
少し混乱し始めた私に、容赦なく部下たちからの視線が刺さる。
どうするんですか、自分たちはどうすればいいんですか。指示を仰ぐ視線に、私は一瞬躊躇する。
小さく呼吸をして、しっかりしろと、自分に呪いをかける。
「私が先方と掛け合っても無理ね。上と掛け合ってくるから、全員待機!休憩!昼寝!」
オフィスの空気がやるせなくなるのが分かる。よどむ。悔しいが、私には何もできない。
クライアントなしで存在できるものではない。クライアントの思うようなものを、出来るだけ忠実に、そして、出来るだけ高品質に、形にするのが仕事だ。相手もそれを理解して、直接私に電話をつないだのだろう。
真ん中で仲介を務めている営業部を完全に取っ払っている。
ひとつだけ深いため息を零して、私は内線をつないだ。