この冬が終わる頃に
仁和麻人 2
目が覚めると、見知らぬ布団に包まっていた。
その布団は、自分の家の布団と違って、とてもふかふかしていて、暖かかった。心地よく布団を抱きしめて寝返りを打つと、まどろむ視界の向こうに、知らない空間が合った。ゆっくりと視点を合わそうとすると、思考能力が復活した。
「どこ?」
抱きしめていた布団を放り投げ、飛び起きる。
そこは、見知らぬ部屋の見知らぬベッドの上だった。
髪の毛を搔き上げながら、自分の状態を確認する。よれたブラウスに、しわの入ったスカート、つま先を縮こまらせたままのストッキング。昨日の夜のままだった。
仁和にレストランに連れ去られ、付き合うとか、そんな唐突な話をされ、気付けばここだ。
察するに、出されたワインに酔いが回って、挙句、ここは仁和の家だろうか。
あたりを見渡すが、仁和はいない。
部屋には暖房がかけられていて暖かい。
ベッドの横からは、加湿器が白い煙を吐いている。壁に掛けられた大きなテレビはお昼のワイドショーがつけっぱなしで、私に気を使ってくれたのか、最低限聞き取れるほどの小さな音量だった。
恐る恐るベッドから降りて、部屋を見渡す。
ソファとテレビ、部屋の隅にはぎっしりと詰まった本棚がある。指先を本に伸ばしてみると、どれもデザイン関係の本や雑誌だった。私が学生時代に使っていた本から、最新の雑誌まで、きちんと種類別、年代別に収められていた。
まだ読んでない号の雑誌を見つけ手を伸ばそうとした時、カーテンの向こう側で何かが動いた様な気がした。
「え、いやっ、何?」
窓は閉まっていて、人の気配ではない。というか、カーテンの向こうに仁和本人が立っているような悪趣味なことあったら、すぐに一一〇当番してやる。猫か、ねずみか、そんな可愛い動物を仁和が飼っているイメージも持てず、きゅっと手と手を握り合わせて意を決して、カーテンを捲る。
「へ?」