この冬が終わる頃に
電気ケトルが沸騰を知らせる。
食器棚の奥にしまっていたカップラーメンを取り出し、そこにお湯を注いだ。
決して広くはないワンルームだが、今日は酷く広く感じた。
ソファに座って、カップラーメンをすする。
そういえば、仁和の家は広かった。豊かな生活しているのだろうな、という広さだった。
仁和と結婚でもしたら、私もあの家の家具のようになるのだろうか。
そこまで考えて、おかしな妄想をしている自分に気付いた。そもそも、付き合ってもないのに、結婚、なんて単語が出てくるのが可笑しい。そもそものそもそも、仁和のことが好きでもない。
「疲れるわ、まったく。」
ポツンと呟く。
誰もいない、いつもの私の部屋。凄く落ち着くのと同時に、無性に寂しかった。
仁和と、ということは置いといて、この先の人生を考えてしまう年齢にはなってしまった。
他人が帰ってくる家と、誰かが食べてくれる料理と、私のことを聞いてくれる人と、そろそろ、そういう生活に手を伸ばしたい自分がいるのも分かる。
ずるずるっと最後の麺をすすり切る。
「お局様で、煙たがれるねぇ、言ってくれるわ。」
あながち、間違いじゃない。