三度目の初恋。

一人目は、青い人。

「何気にお前、歌上手いよな」

それが一度目の初恋の瞬間でした。

相手は、ハルトという同級生の男子。
隣の席で結構仲が良くなったある日のこと。

歌を歌っていた時に言われたその一言が、初恋の瞬間です。

「ハルト。好きな人いる?」

「いる」

耳まで赤くして答えるハルトを見ながら私まで恥ずかしくなりました。
あの時に恋することの幸せさを知ったのです。

「だ、誰・・・?」

思い切って聞くと。
ハルトはいきなり目を合わせ、何かを決心したように息を吸い込み、
すぐにまた吐き出してしまいました。
まるで何か言おうとしていたことを抑えるように。

「………教えねぇよ、ばーか。お前が、もう少し可愛くなったら教えてやる」

そんなことを言うハルトが愛しくて、思わず私は

「それなら、私頑張るよ?」

なんて言ってしまいました。
それを自分で理解した瞬間、私は恥ずかしくなりその場から逃げてしまいました。

その後に、ハルトがつぶやいたセリフを私はこれから先も知ることはないでしょう。

「………くっそ……気づけよ、ばか」







「ずっと好きだった」

何があったのかよくわからない。

「は、はなしてっ」

その手から逃れようともがくけれど、逃げることはできなかった。
いきなり知らない先輩から想いを告げられ、抱きしめられる。
身長150cmの私の体は先輩を押しのけられるほど力を宿していなかった。

「俺は、君のことがずっと前から…」

どんどん力がこもっていくその腕に首が締め付けられ、呼吸が苦しくなってくる。

「……やだ、やだやだ、離してよ!」

「どうして俺を見捨てるんだ?俺は君のためならなんでもするのに」

そう言って笑う先輩の目はなんだかとても怖かった。
ついに私の体は抵抗することもできないくらいまで締め付けられた。
そのとき、先輩の影に見えたのは、

「ハ、ルトッ……!」

涙があふれる。
今、心の中で咄嗟に助けを求めた彼がそこにいた。
驚愕した表情でこちらを見て、一瞬で状況を把握したように私を見ると、ハルトは私に向かって少しだけ微笑み、先輩と目が合うと今まで見たことのないくらい怖い目つきで睨む。その度に力が強まっていき、気が遠くなっていくのを感じた。

「な、なんなんだよ、お前!」

先輩が叫んでいるのが微かに聞こえた。

「だまれ」

ガキっ

何かの折れる音がして。

「好きな奴くらい守れねぇで何が告白だ!てめぇのは告白じゃねぇ、ただの押し付けだ!!!」

ハルトの叫ぶ声が聞こえた。
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