カッパァ華
「こいつ、またびびっとる……」



「だって……カッパとかいたら、喰われたらどうすんねん……」



「おとん言うてたわ! カッパァは危害は加えたりせんて!」



「でも、怖いわ……」



「お前なんでも怖いんちゃうか!
俺は、お前のおばちゃんのが怖いわ」



その時、武志の釣竿の穂先がしなり始めていた。



「おい! 武志! 竿! 竿!」



「ワァァ……嫌やわ……秀くん代わってや……」



「あかん、こいつ……
またおばちゃんに、ちくる目をしとる。
代わったるから、ちくるなよ!
そうや! カッパァのことも誰にも言うなよ!

秘密基地取られたら、カッパァが、
ガアガアガアガア泣くんやから!
分かったな! 二人とも!」



「ガアガア言うんか……」



秀樹は武志の竿を引き上げていた。



「けっこう重いぞ! カッパァかも!」



座ったまま動くことも出来ない武志の真横で、秀樹は力一杯竿を持ち上げた。



「よし! げ……ショックンや……」



ショックンとは大きなウシガエルのことだ。



「キモッ! いらんわ! こんなん」



そのまま秀樹は、竿を地面に置いて戻っていたが、横ではホッとした表情の武志がいた。



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