カッパァ華
「おとん……カッパァが鳴かない……
なぁ……おとん……
カッパァに……俺の声が聞こえてないだけだよな……」



「お前は、ここにいてろ。
中はまだ危ないかもしれんからな……
お父さんが、この中に入って確認してくるから」



政吉はそう言うと、入口の焼け焦げた木々を移動さし、ゆっくりとした足取りで中に入って行った。



政吉が充分に入れる穴の中は、木々や華々が燃えた後の独特の匂いが残り、足場もぬかるんでいた。



ゆっくりゆっくりと歩を進める政吉もまた、秀樹同様に祈り続けていた。



「カッパァ……生きてろよ……
やっと再会出来たとこなんやからな……
まだまだ話したいことはたくさんあるんやからな……」



政吉は、頭の中に映る不安を消すように呟いていた。


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