カッパァ華
「なぁー! おとん! 虫取りいこうや!」



「今日は盆やからな。殺生はあかん」



秀樹の父親【山井 政吉:マサヨシ:49歳】は、今日は秀樹を連れて行きはしなかった。



「チェッ……じゃあ皆と野球でもしてくる
わぁ!」


「暑いから帽子かぶってけな」



「わかったわ!」



真夏の日差しを受けながら、近所にある友達の家のチャイムを鳴らし、遊びの相手を探す秀樹の影が地面に映し出されるいつもの光景。



「とおるくーん。あっそぼー!」



「秀くんかー! 今行くわー。ちょっと待ってやー」



【浮山 とおる:12歳】は玄関から小走りに出てきた。



「今日は何するん?」



「野球しようや!」



「オッケー! じゃあ、みんなも呼びに行こー!」



「ほんじゃぁ、おれ、自転車持ってくる
から横の武志も呼んどいてや!」



「わかったぁ!」



秀樹は、自転車を取りに急いで家に帰っていた。



【仲山 武志:タケシ:12歳】も加わり3人で近所の広場へと向かう6つの車輪。



「どうせ、誰かおるやろー!」



秀樹の読み通り、広場にはすでに野球を
する集団がいた。



「おーい! 一緒にやろうや!」



秀樹の呼び掛けにみんなが集まり、秀樹
の望み通りに野球が始まっていたのだ。

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