カッパァ華
「お前ら早いって! 帰りだけは!
弱虫やなぁ、まったくー!」



愚痴をこぼしながら、秀樹はさらに話を続けていた。



「さっき音が聞こえてきた方を見たら、2つの光が見えたんやけど、ここ熊とかおるんかぁ?」



「くまぁ? はよ帰ろう!」



武志はそう言いながら、既に自転車のペダルに足を付けていた。



「また明日探検してみようや! 熊なら
鍋にできるんちゃうんか!」



秀樹は興奮した様子で、はしゃいでいた。


3人はそれぞれの家に帰って行っていたが秀樹は、今日みたものが気になって仕方なかったのだ。



「なぁ、おとん。よく行くあの山あるやろ?」



秀樹はお風呂に入りながら、父親に話しかけていた。


「あぁ。行ったんか?」



「武志らと、今日行ってきてん!
でも、あそこでさ今日なんかわからんけど動いててな!
武志ら必死に逃げよってん!
ほんま弱虫やわぁー」



「お前も気をつけろよ。あそこは蛇とかおるんやからな」



「ちゃうねん。蛇とかちゃうねん。
なんかなー……熊みたいなな、でっかい目だけ見えてん!」



「あんなとこに熊なんか、おるか。
犬かなんかやろ」



「えー。熊ちゃうんか。
鍋にしたかったのになぁ……」


本気で秀樹は鍋を考えていた。


< 5 / 193 >

この作品をシェア

pagetop