カッパァ華
「まさか……でも本当にそうなら……」



秀樹が風呂から上がったあと、父親の
政吉が目を細めながら呟いている姿が水面に映っていた。





翌日もまた秀樹の元気よく友達を誘う声が響き渡る。



「とおるー! 今日もまた昨日のとこ行こかぁ!」



武志には聞いても無駄なことが分かっていたため、とおると話し出していたのだ。



「んー。熊なら襲われたらヤバイやん」



「熊とかちゃうみたいやで。あそこはそんなんおらん言うてたわ!
でも、気になるしなぁ。行こうや!」



「熊おらんならいいけど……
でも明るいうちに行こ!」



「おい、武志はよ自転車持ってこい!」



「今日も行くんかー……」



「はよ持ってこやな、もう遊んだらへんぞー!」



まぁ毎度のお決まりのパターンだった。



3人は
【ワクワク、不安、恐怖】
と三者三様の考えを持ちつつ、ペダルを漕いでいた。



「やっと着いたぁ!」



興奮気味に秀樹はそう叫ぶと、すぐに入口のある獣道に出発。



「おるかなぁ! 一応お前らそこらへんに
落ちてる棒持っとけよ!
なんか出てきたら戦わなあかんしな!」



その言葉に半べそをかいているのは、当然武志だ。
見るからにすぐ折れそうな弱々しい枝を探し手に握りしめていた。
藁をも掴むってやつだろう。



そんなことはお構いなしに、秀樹は昨日見た場所を探していたのだ。



「たぶん……ここらへんやったよな?
なぁ! とおるー!」



「たぶんそうやでー。なんかおる?」



「アホか! まだ来たとこやないか。
まだわからんわー」



山の奥はアスファルトに囲まれた住宅街とはまったく違い、真夏だというのに、
ひんやりとした空気が漂っていた。


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