カッパァ華
池には静かに、しかし大きな波紋が2つと小さな波紋が1つ広がっていた。



秀樹はさっき、目の前で見た河童親子を頭の中に甦らせ、水中での動きを思い浮かべて真似をし始めていた。



「プハァ! やっぱり水の中は苦しいよなぁ……なんであいつら顔も出さずに潜ってれるんだろう……
ずるいなぁ……あいつら……
オリンピック出たら、間違いなく金メダル取るんだろうなぁー」



そう呟く秀樹の顔には、安心したような優しい表情があったのだ。


「良かった。カッパァも俺みたいに、おとんがいて。寂しくないよな。
こんな山の中で独りぼっちとか辛いもんな。」



秀樹は呟きながら池に出来た水の流れを目で追っていた。





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