四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】
「はい、落ち着いた?」
「ありがとう…」
あたしは朝倉くんの差し出した缶コーヒーを、彼の手に触れないように気をつけながら受け取った。
冷たい缶を頬にあてる。
蕁麻疹の痒みは冷やすとマシになるので、朝倉くんにお願いして近くのコンビニで買ってきてもらったのだ。
「でも、驚いたな」
朝倉くんはそう言いながら、あたしの座ってるベンチに腰かけた。
ち、近いっ。
大人二人サイズのベンチだから仕方ないけど、ちょっと動けば肩が当たりそうだ。
触れると蕁麻疹が出るってわかったくせに、どうしてこんな距離で座るかな。
あたしはお尻を少しずらして、彼が遠ざかった。
「まさか蕁麻疹出るなんて…。でも、蕁麻疹出ても俺のこと好きなんて、かなり嬉しいよ」
「いや、好きじゃないから!」
あたしは思わず叫ぶように否定していた。
朝倉くんが不思議そうな顔であたしを見る。