四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】
「そ、そう!エイプリルフール!エイプリルフールの嘘なのよ」
「確かに今日は4月1日だけど、わざわざ春休み中に二人きりで呼び出して、そんな嘘つかないだろ?」
「うっ」
あたしは言葉に詰まった。
朝倉くんとは去年一年間同じクラスで一緒に学級委員をやっていて、何かのためにと携帯番号もメルアドも交換していた。
だから気軽に呼び出してしまったけど、考えてみたら学級委員の用事以外で二人で外で会うのは初めてだ。
この呼び出しが特別なものに受け取られても仕方ない…のかもしれない。
しかーし!
これは海よりも深いわけがあるのだ。
だけど、それを言ってもいいものなのか。
「だいたい、朝倉くんって告白は絶対断るんじゃなかったの!? ごめんって、好きな子がいるからって断るって有名なのに!」
「あー…それは」
朝倉くんが頬をかきながら目をそらした。
心なしか、その頬が赤い気がする。
「だから…」
彼は逡巡するようなそぶりを見せた後、いきなりこちらを向いて身を乗り出した。
いきなり間近に迫った顔にビックリして、息を飲み込む。
「俺の好きな子が鮎川なんだよ」
その言葉に、あたしの思考能力は停止した。