MIND ART
うつむいて走っていると
よく行く商店街に着いて
いた。人は、一人もいないみたいだ。

「あのじいさんが言ってた
こと、多分本当なんだろうな」

日がほどけた靴ひもを
直しながら言った。

「心の、絵?」
「あぁ。考えてみれば、
さっき俺たちを捕まえようとしてたやつらも心の絵
がどうのこうのって言ってた気がする」
「うん。そういえば……」

短い沈黙があった。
日は、何かを言おうとしてためらっているようだった
「冴」
「ん?」

日は私の目をじっと見て
言った。

「もし、あのじいさんが
言ったことが本当で
操られてないのが俺たち
二人だけでも、逃げ続け
よう。元に戻すんだ。
必ず」

私の意思とは裏腹に、
気付くと首が縦に振られていた。

「腹減ったなぁ……」
日がさっきとは打って変わった、気の抜けた声で
言った。

「よし!なんか買って
くるよ」

そう言うと、日は私を一人残して行ってしまった。
この間に私が捕まるなんて考えたりしないのだろうかまぁ、いいや。私も昨日の朝以来何も食べてない。
でも、私たちに食べ物を
恵んでくれるお店はある
のだろうか?
私は、たくさんの不安と
共に、日が帰ってくるのを待った。
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