MIND ART
「ただいま」

日がコンビニの袋を顔の高さに持ち上げてみせた。

「売ってくれたの?」
驚いて聞くと日は

「どの店にも、店員も客も
一人もいない。勝手に
取ってきちゃった!
あっ、お金はちゃんとレジのとこに置いてきたよ」
「そっか……」
「まあ、普通に考えれば
そうだよなあ……
心の絵を奪ってるやつらは全部同じにするのが大好きなんだから、着たい服とか欲しい物が個人個人で
買える訳ない。だから、
店には誰もいない……
にしても、まさか食うもんまで自分で決められない
なんて……笑っちゃうよな……ははっ」

そう言って日はちょっと
笑って、それからどこにもぶつけられない怒りを、
壁に向かってぶつけた。
壁を思いきりパンチしたのだ。そして、地面に座り
込んだ。

「終わりなのか?この
世界は。本当にこのまま
終わっちゃうのか?」
「日……」

日は泣いていた。涙が一滴コンクリートの地面に落ち染みが出来た。

「日……大丈夫?」

日は顔を上げて無理に
笑った。

「おぅ!そうだよな!
俺たちはまともなんだ
俺たちが世界を元に戻せばいいだけのことだもんな!さて、飯食うか……
どっちがいい?」

日はおにぎりとサンドイッチを私の目の前に掲げた。
私は、選ぶのが嫌いだ。
食べる物とか、どこで、
何して遊ぶとか、そういう事を決めるのが嫌いだ。
……もしかしたら、嫌い
なんじゃなくて出来ない
だけなのかもしれない。
あまりにも、人に合わせた生き方をし過ぎたせいで。だから、私の口癖は……

「ん?どっちでもいいよ
日が決めて」

日は一瞬、私の目を見て
「じゃあ、これ」
と言っておにぎりを選んだお腹が空いていた私は
夢中で食べていた。
すると、日は自分の事を
話し始めた。
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