空とシャボンとさくらんぼ



俯いたあたしの横を通って桜坂くんは屋上に入った。


扉が閉まって二人きりになる。



……き、きんちょーする、ような気がしないようなするような。


自分でもよく分からない。



「今日はどうした?」



桜坂くんはいつもの場所に座って、あたしを見上げて聞いてくる。


う、上から見ると分かるけど、桜坂くんって睫毛長い……羨ましいな。



……じゃなくて。




「えーと、よ、用事は特にな……くない!」



あった。


というかそのために来たんだった!



「こ、これ!昨日のサイダーのお礼」



ずいっと買ってきたお茶を一本差し出す。



「その、こんなものでお礼になるか分からないけど……他に何も思いつかなくて」


「……別によかったのに」


「でも、嬉しかったから」



はいっ、とさらに差し出すと桜坂くんは受け取ってくれた。


ちょっと無理矢理だったかもだけど、受け取ってくれなかったらそれはそれで悲しいから良しとしよう。


あたしも桜坂くんと少し間をあけて座り、もう一本買っていたのお茶をあけて飲む。


熱かった体が冷やされていく感覚……気持ちいいなぁ。



「はぁ…おいしい。あれ、桜坂くんは飲まないの?」


「あぁ…」



じっとお茶を見つめる桜坂くんに少し不安になる。



「もしかして、そのお茶嫌いだった……?」


「そういうわけじゃなくて……その、」


「そっか。よかった」



にこりと笑うと桜坂くんは驚いたような顔をした。


………なんだ?


あたし、何かした?


わ……分からん。



………うん。分からないのは気にしないでおこう。



しばらくお互い黙ったままだったけど……


き、気まずい……何か話題は……



「そ、それにしても最近は暑いよね」



って、あたしは何を言っているんだ!


夏だから当たり前じゃん!




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