空とシャボンとさくらんぼ



「……空は広いねぇ」



ポツリと言葉に出すと、桜坂くんがこちらを見る気配がした。


なんでこっち見たんだろう、と思いながらも、あたしは特に気にせずに言葉を続ける。



「あたしね、落ち込んだときとかこうやって空を見上げるの。
そうすれば、なんだか空があたしを励ましてくれてるような、力をくれてるような気がするから」



ほんと、思い返してみるといつもあたしって空を見上げてるや。


……って、なんであたしそんなこと言ってるんだろう。



「えぇっと、つまりね、そのー……」



ガバッと起き上がって桜坂くんを見る。


うぅ……なんか不思議そうな目で見られている気がする。


でも、ここまで言ったら何か言わないと……!!



「つ、つまり!!」



ぐいっと桜坂くんの方にあたしは体を近づける。



「つまり、あたしは空が好きなんだよ!」



………って、何言ってるのあたしいぃ〜〜っ!!


桜坂くんも驚いて固まってしまったじゃないかぁ!!


と思ったら、右手で口元を隠すようにして桜坂くんは顔を背ける。



そ、そんなにヘンなこと言ったのあたし!?


カァ、と熱くなるあたしの顔。



「い、いや、あのね、だ、だからね、お、桜坂くんも落ち込んだときとか、何かあったときは、空見上げるといいんじゃない、かな?」



く、苦しい……自分でも無理矢理すぎる完結の仕方だと思うよ。


うわあぁぁ、どうしよぉ〜〜〜!??



わたわたと慌てたように言うあたしを見て、桜坂くんは吹き出した。



な、なぜっ!!?



そのまま桜坂くんは笑い出す。


その姿をぽかーんと見るあたし。



………何が起こっているんだ。


状況が整理できずにあたしはただ茫然と桜坂くんを見る。


そのうち桜坂くんは笑い疲れたのか、壁に寄りかかってあたしを見た。


いつもの真っ直ぐな視線の中に、今は少しからかうような色が浮かんでいる。



「それってさ、愛の告白なわけ?藍巴チャン?」



………はい?





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