空とシャボンとさくらんぼ
愛の、告白?
どうしてそういうことに?
……まぁ、いいや、それはどうでもいい。いや、よくはないけれども。
それよりも……
『藍巴チャン』
桜坂くんが、あたしの名前を……
普段、誰にも言われないあたしの名前……桜坂くんが……
カアァ、と自分の顔に熱が集中する。
なんだろ……恥ずかしい、けど…すごく嬉しい、かも。
ぼけーっとしていると桜坂くんの声が聞こえて、あたしは我にかえった。
「大丈夫か?」
「はっ!へ、へーき!!」
ぶんぶんと頭を振ると、また倒れるぞ、と苦笑された。
「桜坂くん、どうしてあたしの名前知ってるの?」
藍巴……あたしの名前。
学校のみんなはあたしのことアイって呼ぶから……
桜坂くんが知ってるとは思っていなくてびっくりした。
「…クラスメートの名前ぐらいは覚えてるよ」
「そう、なんだ」
そっか……別に、特別な意味とかはないんだ。
ちょっと残念……
………今のはナシで。
「まぁ、覚えてないやつがほとんどだろうけどな。なぁ、藍巴チャン?」
ドキッ、と響くあたしの心臓の音。
……お察しの通り、あたしはクラスメートのフルネームなんて覚えていませんよ。
だって覚えられない……
「みょ、名字か名前が分かってたら困らないもん…」
「社会に出てったときが心配だな」
ククッ、と笑う桜坂くんをあたしは恨めしげに見た。
反論、はしたくても桜坂くんの言ったことの方が正しいし……
これがあたしにできる唯一の対抗。
じーっと見つめていると、その視線に気づいた桜坂くんが苦笑した。
……そういえば、あたし桜坂くんの名前知らないな。