空とシャボンとさくらんぼ




あたし、次第……



その言葉に少し体が緊張するのが分かった。



「伝えたかったのはそれだけなんだ。それじゃあ……」


「ま、待って!」



あたしは教室に向かおうとする沢木くんを呼び止めた。


不思議そうにこちらを向いた沢木くんは、やっぱり見た目は王子様だな、とぼんやり思う。



「そ、その……なんで、あたしに力を貸してくれたの…?」



沢木くんとあたしに接点なんかこれっぽっちもない。


というかあたしは名前すら知らなかったし。


なのに、そんなあたしに力を貸してくれるなんて納得がいかない、というか、不思議というか……



「別に、君のためってわけじゃないんだ」


「え?」



どういう意味?


目線で問いかけてみるけど、沢木くんは爽やかに笑ってあたしを見るだけ。



「藍巴ちゃんには感謝してるよ。
空を変えてくれたのは藍巴ちゃんだからね。
……藍巴ちゃん次第、っていうさっきと言葉は矛盾しちゃうけど、空のこと、よろしくね」



それだけ言って、沢木くんはあたしに背中を向けて戻っていった。


一方あたしは……



「どういう意味?」



沢木くんの言葉の意味が分からなくて、しばらくその場で考えていた。




このあと授業に遅れてしまったのは、沢木くんのせいだということにしておこう。












――――――――――――――――――
――――




「きりーつ、礼」



号令と一緒に騒がしくなる教室。



つ、ついにお昼休みが来た……



「アイ……」


「真琴」



さっき真琴には沢木くんのことは言ったから、あたしが屋上に行くことは知っている。



「アイ、わたしはそんなに偉そうなことは言えないけど……アイが後悔しないように、頑張ってきなさい」


「真琴……うん、頑張ってくるね」



にこりと綺麗な笑顔で真琴はあたしを見送ってくれた。





< 36 / 46 >

この作品をシェア

pagetop