空とシャボンとさくらんぼ
青空と涙
それからの夏休みはあまり記憶に残っていない。
ただ、家から出るのが嫌で勉強してたような気がする。
真琴も気を効かせてか、そっとしておいてくれた。
いつも宿題を溜めて、最後の一週間あたふたしているからなぁ…
早い段階で宿題を全部終わらしたと家族に言ったときはもう……
「頭、大丈夫?夏バテ?」
「明日雨かしら?」
「何か悩みでもあるのか?いつでも相談のるぞ?」
なんてしばらく言われた。
失礼だな、と思いながらもあたしは何も言わなかった。
(事実なので言えなかった、が正しい)
ぼんやりとした日々を過ごして、ついに夏休みが明ける。
「おはよう」
「おはよう!焼けたねぇ〜」
「やっぱり?」
みんな夏休みエンジョイしたんだな、とその姿をあたしはぼんやりと見つめる。
「おはよ、アイ」
「真琴、おはよう」
下駄箱で真琴に会ったので、一緒に教室に向かう。
「アイ、気になってる?」
「え?」
ドキッと心臓が音をたてる。
「べ、別にあたしは……」
「さっきから目線がキョロキョロしてるけど?」
ニヤリと笑う真琴に、カアァ、と頬に熱が籠る。
「だから!!別に桜坂くん探してるわけじゃ……」
「あら。わたし、桜坂を、なんて言ってないけど」
「うっ……」
墓穴掘ったぁ〜〜っ!!
くそぉ……!!
クスクスと笑う真琴の隣であたしは顔を赤くしながら教室に入った。
……さっきは否定したけど、自然と桜坂くんの席に目線がいってる。
桜坂くん、まだ来てないんだ。
安心したような、残念なような……
「席つけー」
がやがやしていた教室が一気に静かになった。
先生が入ってきてあたしも自分の席に座る。
「今日から夏休みも終わり、受験生として……」
……話、つまんないな。