彼の秘密と彼女の秘密
「ねぇ、女医さん。どんな仕事で私に近付いたのか今でも私にはわからない。
でも同じ女なら、愛する男の子供を産みたいって思う気持ち、わかってもらえない??
どこの誰にどんな指令を受けてここにきたのか私には関係ないの。
ただ、このお腹に宿った命を守りたいだけなの。
どんな薬で、どんな薬なら助かるか教えてもらえない?
話してしまって自分の居場所がなくなるようなら、ここにいればいい」
「ちょっと待ってください。瑠璃、その人は瑠璃を狙ってるのですよ」
「わかってるよ。でも居場所がなくて悲しい気持ち、私、知ってるから。
ここにくるまで1人ぼっちだったから。凛がダメって言うなら私が雇うよ。
私が全力であなたを守るから、お願いします。教えてください」
瑠璃は土下座した。
これには一同驚く。
さらに驚いたのは、女医が話し始めたからだ。
「私は久賀の忍です。名前は華といいます。瑠璃さんに処方した薬は
赤子を堕胎させる為の薬です。その意図は私にもわかりません。
ここに対処できるかもしれない薬があります。
信用するもしないもあなた次第です。こんな事をして申し訳ありませんでした」
「華さん、私は信じるよ。話してくれてありがとう。傷が癒えるまでここにいてね。
その後、久賀に帰りたかったら帰ればいい。ここに残るなら、またみんなで話し合おう。
薬ありがとう。これ飲まなきゃだから行くけど、後で私の部屋にきて」
そう言って瑠璃は桐谷と戻って行った。
「とんでもない女ね」
「僕の惚れた女はすごいでしょう、華さん」
「はい」