彼の秘密と彼女の秘密


父上の希望もあり、剣道の試合が行われた。

審判、斎藤。

嵐と桐谷も見にきていた。


瑠璃も凛も一番無難な中段に構えて審判の合図を待つ。

そんな僅かな時間でも瑠璃は凛の力量を見抜こうと凛を見る。


射抜くような眼差しに居心地の悪さを感じる凛だったが今は気にしてられない。


「始め!!」


審判は開始の声をかけた。


一瞬でも気を抜いたらそこで終わりそうだ。

凛にはわかる。

やはり瑠璃は相当な遣い手なのだと。

数多の剣をみてきた凛だったが、相手に瑠璃のような威圧感を感じることなど滅多にない。


どれくらい時が経っただろうか。

両者は今だに一歩も動いていなかった。

いや、迂闊に動けないのだ。

辺りが緊張感に包まれながら静寂が訪れる。

審判は腕を組みながら、観客は固唾をのんで2人を見守る。

先に仕掛けたのは凛だった。




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