彼の秘密と彼女の秘密
珍しいな。御当主様が先に仕掛けるとは…
審判は凛らしくない戦いに微かな疑問を持った。
いつもの凛ならば自分から仕掛けるなど滅多にない。
相手の出方を辛抱強く待ち、隙ができた瞬間に斬り込む。
それが凛の常套戦法なのだ。
しかし今はどうだろう。
いつもとは真逆だ。
凛が素早くこちらとの間合いを詰め、瑠璃は凛の一撃を受け止め鍔ぜり合いになっている。
審判が冷静に分析してる頃、当の瑠璃は冷めた眼差しで凛を見つめていた。
これが凛…。
その不敵な笑みに凛は怪訝な顔をして一端、間合いを取る。
…何だ?
この違和感は…。
いつも冷静沈着なはずの自分の心がざわつくのを感じた凛は困惑してしまう。
しかしそれを振り払うように再び竹刀を振るった。
いつの間にか瑠璃の顔は無表情に戻っていたが、凛の竹刀を受け止めるよう努めることにする。
激しい攻防の応酬に外野は目を見張っていたが、凛はそれどころではない。
しかし瑠璃は相変わらずの真顔で竹刀を振るう。
瑠璃は瑠璃で凛の余りにも重い一撃に何度も手を痺れさせているのだが、
そんなことは微塵も顔に出さない。
瑠璃の心中もまた穏やかではないのだ。
凄い…!
攻撃が速過ぎて、ついていくのが手一杯だ。