彼の秘密と彼女の秘密
それは対峙している凛だけが目視できたことで、
瑠璃の背しか見えていない審判と観客には見えていない。
黒曜石のような瞳には急に光がなくなり、その凍てつくような眼差しには寒気さえ感じる。
瑠璃は不覚にも一瞬怯んでしまった。
その所為で寸止めすることを忘れてしまう。
凛は自分の鳩尾に竹刀が打ち込まれる寸前で瑠璃の喉元に突きを繰り出す。
なんとか瑠璃は凛の一撃を回避したものの、自分の竹刀には確かな手応えを感じてしまった。
鈍い音が辺りに響くなり、凛はしゃがみこんでしまった。
見事に鳩尾に入った瑠璃の攻撃のお陰で咳込んでしまい上手く呼吸ができない。
凛の瞳にはその苦しさで涙が滲んでいた。
「そこまで!!」