君と防音室で…
夏休みも終わって…文化祭シーズンになった。
「うちのクラスは昼間はカフェ、4時以降はレストランっぽい感じの飲食店でいいよな?」
やけに燃えてる…3年B組の学年委員であり学祭実行委員の茅島篤斗。
通称あっつー。
(いろんな行事に燃えてて熱いからあっつーって言うらしい。)
「なんならさー、夕方からのレストランはBGMやってもらおうよ!」
「誰に?」
「そんなん…
「「「全国ピアノコンクール金賞の美音に決まってる!」」」
みんな知ってるんだ…。
キラキラの目で見つめるクラスの女子達の圧力がすごい。
「美音ーやるのか?」
「ちょっとやりたい…かな。」
あっつーに聞かれて、素直に答える。
だって実際…
全国ピアノコンクールでの多くの人に聞いてもらえる嬉しさ喜びを知ったから。
「じゃあ頼むなー。っつーことは!今年は音楽室か!?」
あっつーが言って5秒後に…
クラス全員が指でグットを作った。
そして…その後係り、必要なもの、予算が決まって買い出し係を決める。
「今係になってねぇやつ」
私はそっと手を上げる。
私以外手は上がってない。
え!?まさか私だけ!?
「じゃあ美音とー誰かもう1人」
『あ、明日から転入生来るからそいつと吉岡でいいんじゃないか?』
みんなの心が見える…
きっとみんな心の中で転入生なんか聞いてねぇ!だと思うから。
「美音大丈夫か?」
「うん!」
みんな係で忙しいし…仕方ない。
「じゃあ、今日のホームルームはおわりな!買い出しと衣装係は明日からよろしくな」
「「「「「はい!」」」」」
私と衣装係の4人が返事する。
ホームルームが終わって…やっと放課後。
防音室に行きたかった。
なのに…
なぜ私は…ここに…衣装係の買い物に付き合わされているんでしょうか?
「美音の衣装どーするー?」
「制服でいいんじゃ?」
「いやー、美音はうちのクラスの綺麗代表者だからさ、いい衣装着てほしいじゃん!」
綺麗代表者って…
明らかに1番…いや2番目にあっつーの次にはりきってる長倉カナ。
そして…自分大好きの代表者だと思う。
悪くはないし嫌いなわけじゃないんだけどね。
「全国ピアノコンクールの時のドレスでも着ちゃう!?」
「場違いでしょ!」
「確かに!」
カナ達が笑う。
それに巻き込まれて私も笑う。
「あ、ごめんね!美音…今日もピアノのレッスンあるよね!」
自分たちのペースで進めるカナとは違って…気配りの出来る松下愛衣。
「大丈夫ー!6時までに帰れたら」
「そっかーあ、これとか美音の衣装に良さそう!」
愛衣の選んだ生地は赤のつやめの生地。
カナとは違う柔らかい笑顔で心が穏やかになる。
「派手くない⁇美音はこっちでしょ!」
カナが選んだ生地は…黒のスパンコール…。
ここにいるカナ以外全員思ったと思う。
学祭でこんなん着てたら引くよ。
と…。
その後、残りの2人もいい生地探してくれたけど…結局自分の好きな赤のシフォンっぽいやつでお願いした。
家に帰るとなぜか疲れてベットに倒れた。
のちに私は…東堂先生に怒られることになる。
ピアノの特別レッスンを…
寝過ごしたから…
そして後悔もする。
1日ピアノに触らないなんて…指がなまってしまうから。
次の日。
朝から目覚めがよくて、ピアノを弾いた。
昨日なまった指は次の日のうちに取り戻したくて必死になると…学校を忘れた。
2時間の体育の授業の間に教室に行くと…窓側の1番後ろに机が増えてた。
黒板にも
Welcome 瀬川優馬と書いてあったから…名前は瀬川優馬だとわかる。
なんの根拠もないけど…危ない予感がする。
20分後。
危ない予感は的中した。
転入生の彼、瀬川優馬は…初日から多くの女子に囲まれていた。