君と防音室で…
ホームルーム。
「今から係ごとに仕事開始なー」
「あ、美音は優馬連れて買い出しよろしくな」
まだ話したことのない瀬川優馬。
何を話せばいいのか…わからない…
「吉岡美音…さんだっけ?よろしく」
以外と普通。
「あ、うん!じゃあさっそく行こっか」
とりあえずで優馬(本人が優馬でいいと言ってきた)と指定された店をまわる。
やっぱり沈黙…?
と思ったけど、案外優馬は話が上手くて盛り上がる。
「美音って全国ピアノコンクールの金賞とった子だろ?」
「うん…実はね。」
「俺さ、本選見に行ったんだよ。妹が予選で落ちてさー、悔しいからって本選行くとか言い出してさ連れてったんだよね」
「そうなんだー」
優馬の妹は優花ちゃんで、ピアノをやってるらしい。
「美音のピアノさ、妹がすごいって褒めてた。俺もさ…鳥肌たった。」
私を知らなかった人にも私のピアノが聞いてもらえて…褒められる。
…これほどの喜びはないっ!
それに…
優馬はちょっと耳が赤い。
普段はあんまり人を褒めないのかな…
「ありがと!嬉しい」
私がちょっと微笑むと驚いたように優馬も微笑んでくれた。
それにしても…優馬の見た目はすごい軽い男の子っぽいのに、話しててすごくいい人な気がする。
「美音、ここだよね?」
「あ、うん」
優馬とお店に入る。
さりげなく扉を開けててくれる感じが好印象だった。
「えっとー…カラースプレーと模造紙だよな?」
「うん!ピンクと白と水色と…オレンジと緑と茶色のカラースプレーを2本ずつだよね?」
「確かね。あ、カラースプレーあった」
優馬は手際よくカラースプレーを私の持ってるカゴに入れる。
8本くらいカゴに入るとずしっとして重くて…
とか思ってたら、
優馬がカゴを持ってくれた。
「あ、美音模造紙持ってきてもらえる?」
「あ、はい!」
ほんとに今日来た転入生!?
すべてが早い。
優馬に言われて模造紙を持ってくる。
「サンキュー」
ニカっと笑った優馬がカッコ良く見える。
もともと顔の素材がいいからだと思うけど。
その後、会計をして…次の店に向かう。
「あのさ、美音?」
「なにー?」
優馬がオドオドする。
「ここ、通るのか?まずくね!?」
「次のお店まではここ通らないと…」
確かにまずい道だけどさ。
だって…ここは繁華街。
奥のほうは、ラブホ、クラブが立ち並んでいるから。
「俺ら2人で通ったら…学校的にもまずいしさ、変な誤解招くかもしれねぇよ?」
「じゃあ」
「へ?」
「強行突破で!」
私は全力疾走。
優馬の方に振り向くと、驚いてる。
まさか…ピアノをやってる華奢そうな女子がこんなに足速いのか!?
って感じだろう。
(華奢ってゆうのには触れない。)
優馬も少し遅れてスタート。
繁華街は長い。
1キロ…あるかないかってくらいの長さ。
これくらいなら私の体力も持つ。長距離は全然ダメだから…
「はぁっ…」
やっとお店につく。
ついた頃には優馬は私の前にいた。
さすが男子。足が速い。
「美音っ…足速ぇな!」
「まぁね!」
自慢気に言ってみた。
優馬は爆笑。人に爆笑されるとむかつくな…
「ここではテーブルクロスと、オシャレなグラスとコーヒーカップだね!」
無理矢理話しだすと優馬も笑うのをやめた。
ニヤニヤはしてるけど。
「早く入ろ!」
「おぅ」
お店に入るとなぜかエロちっく。
赤いテカテカなカーテン。若干ピンクのライトと白のライト。
1番エロさを増すのは店員さん。
男の…胸元に店長っていう名札がある店長さんは…髪が長くて目が鋭い。それに…服装が胸元全開。
女の店長さん達はバニーちゃんとかナースとかのコスプレしてるし…なんかやばい。
「美音…外装と店内差が激しくね!?」
さっきまでニヤニヤしてた優馬も…焦ってるし、ヤバイ空気を察知した。
「ちょっとやばいね。」
『いらっしゃーい!あら?高校生?』
バニーガール姿の女の店員さんが話しかけてきて冷や汗がでる。
「あ、はい。学園祭でカフェBARをやるんでグラスとかを買いに…」
テンパる私の代わりに優馬が答えてくれた。
優馬はもう平常心を取り戻していた。
「グラスとかはこっち」
こっちこっちと手招きをする店長。
怪しいオーラがハンパない。