俺様とネコ女
「お前、こころちゃんのこと好きなんだな」

「は?好き?」


人の話し声、食器が立てる音。生活音、機械音。直哉の発言に、俺の中から一切の雑音が消えた。

感覚が研ぎ澄まされ、1つの疑問だけに意識が集中した。


ちょっと待て。

かわいい。独占したい。愛しい。楽しい。甘やかしたい。素を出せて心を許せる。

得体の知れない感情が、俺を侵略しているが。


これが、そういうことなのか。


「何驚いた顔して固まってんだよ」

「いや・・・、この感情はそういうことか?」

「当たり前だろ、何言ってんの?」


心底呆れたって顔をした直哉は、すぐ表情を変えた。気持ち悪いくらいの笑み。

「初恋おめでとう。モテ男のコウくん」

「黙れ」

「こころちゃんからは、付き合ってとか言われないの?」

「言われない。それにあいつ、失恋したばかりだろ?」

うーん、と腕を組んだ直哉は頭を垂れた。程なくして、でもさ、と顔を上げた。
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