俺様とネコ女
コウの目線を感じ右を見た。唇にニヒルな笑いを浮かべたコウと目が合う。

「やめるなら今のうちだぞ」

言ったな!

それからすぐ、こげ茶の木目カウンターに置かれたロックグラス。透明な液体の中央に、丸く削られた大きな氷。わーこのお店、絶対美味しい。

同じタイミングで一口目を飲んだ。悔しい。美味しい。むかつく。美味しい。

「コウってさ、どんな仕事してんの?・・・ちょっと聞いてる?」

「ガキに言ってもわかんねーだろ」

「は、わかりますけど。それにガキじゃないことくらい見たら分かるでしょ。おーい耳聞こえてる?会社って健康診断ないの?聴力検査大丈夫?」


「聞こえてる」一瞬コウが笑った。笑うと目じりが下がって、優しさを覗かせた。

ヤバい。ちょっと、落ち着け心臓。ときめくな。
< 18 / 337 >

この作品をシェア

pagetop