俺様とネコ女
待ち合わせ場所に停車している車を見つけた瞬間。私の歩みは鼓動の加速に比例して、早足になり、途中で駆け足に変わる。

「お待たせ。運転変わろうか?」

「やめてくれ」

「だよね。この前は死神が見えたんだっけ?」


助手席に乗り込んだ私に、運転席から冷ややかな笑み。ああもう。くっつきたい。その冷たさを温めて、熱くして、最終的には沸点超えて溶かしたい。


「飯行くか。飲めないから車置きに帰るか」

「じゃあ宅飲みしよ?何か作るからスーパー寄って帰ろ」


無言で車を発進させたということは、イエスなんだろう。

右手だけハンドルを握り、左手は肘置きの上。綺麗な指が無防備で、触れたいという衝動に駆られる。触りたくてうずうずする。

たまらずその魅惑的な指に自分の指を絡ませたとき、不意にコウの指にも力が篭る。


「早速じゃれてきた」

その言葉に、その笑顔に、心臓が軋んだ。
< 188 / 337 >

この作品をシェア

pagetop