俺様とネコ女
あれ。一緒に買い物してもいいのかな。

スーパーの駐車場で、車から降ろしたパンプスが、アスファルトすれすれをさ迷う。


「さっさと降りろ」

「いいの?会社の人いるんじゃない?」

「問題ない」


会社近くのスーパーなのに問題ないんだ。俺とのことは誰にも言うなって言うくせに。

理不尽だ。どうせなら、噂好きでおしゃべりな人に見られて、広めてられてしまえ。

それから、付き合ってます。堂々宣言。そういう流れにもっていっちゃいたい。


車から降りて、コウに駆け寄る。

「私さ、噂では直哉さんと付き合ってるらしいね」

「らしいな。あいついい男だろ?」


見下ろすように笑うその口元に、余裕らしきものが垣間見える。ほんと、憎たらしい。

「だよね。直哉さんは優しくて素敵。誰かさんと大違い」

「あ?」

「でもまあ、どちらかというとコウのほうが好みだけど」

「気が多いネコ」


髪の毛をくしゃくしゃにされた。仲良しカップルが「こいつ~」とか言いながらクシャっていちゃつくようなのではなく。


悪意を感じるほどに。
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