俺様とネコ女
「ところでコウさんそれ何本目?」

回鍋肉はとっくになくなり、かなり飲んだ。ガラスのローテーブルの上には、空き缶がたくさん並んでいる。


「ほんとによく飲むよね。夜中トイレに起きるよ?」

「寝たら起きない」

「明日仕事?」

「明日は休み。ひたすら寝る」

「かわいい」

「は?」

「コウの寝顔思い出したの。あどけなくて可愛いんだよ」


きっと可愛いといわれ気に入らないんだろう。チラリと腕時計を見て、それから小さく呟く。

「まだ22時か。いつもならまだ会社だ」

「ねえ。今から映画見ようよ」


突然の提案に、コウは無言でテレビをつけた。ということは、賛成とみなしていいのだろうか。

「今のうちにお皿洗うね」

まず食器を持ってキッチンへ。それから大量の空き缶を取りに戻ってまたキッチンへ。


「俺洗うから置いとけ」

ソファーから声をかけてくれる。


「いいからいいから」


このくらいさせて。ゆっくりしてて。

スポンジに洗剤をつけぎゅっぎゅと泡立てる。さあ洗うぞと脂っこい大皿を持った瞬間。


「捕獲」



耳元で、低い、甘い、声がした。
< 202 / 337 >

この作品をシェア

pagetop