俺様とネコ女
"俺のためなら"


ここはよくしゃべるくせに、肝心な自分の気持ちになると口を閉ざす。好きだとか、嫌いだとか、一切口にしない。

昨夜のベッドの中でだったり、今のように、クイズのヒント程度だ。


「無視しないでよ、何か言ってよ」

「また邪魔して欲しい?」

「エロおやじ」


この女。癪だから邪魔しない。


「そういえば25日給料日だったね」

「ああ」

「美味しいお酒飲みに行こうね。割り勘で」

「普通、美味い飯食いに行こうじゃないのか?」


酒好きのここらしい発言に笑ってしまう。


「コウの車高かった?」

「そこそこ」

「やっぱり。事故らなくて良かった」

「車欲しいのか?」

「うん。マイカーって社会人っぽいでしょ?便利だし。コウは私のことガキ扱いするけど、とっくに成人済みの大人ですから」

「お前は俺の隣に乗っときゃいいんだよ」


それに、お前になら自由に運転させてやる。好きな時に好きなだけ乗ればいい。もちろん運転の技術を平均水準まで上げたあとでだが。

ここが固まる。露骨に、驚いた顔で。
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