俺様とネコ女
「サンキュ」

「おお?どうした素直だな。ラーメン奢れよ」

「ああ」

「餃子と炒飯と、あと替え玉も」

「ああ」

「冗談だよ。そんな食えない」

カウンターに並んで座って、直哉はメニューを広げてながら、で?と目線をよこしてきた。


「何が」

「こころちゃんのことに決まってんだろ。進展はあったのか?」

進展などない。でも確実に俺の気持ちは大きくなっている。


「こんなに夢中になったの初めてだ。と言うより、お前の言う通り、好きだと認識したこと自体が初めてだ」

「それ、こころちゃんに言ってやれよ」

直哉が笑う。


「あいつも俺のこと好きなんじゃないかと思うんだけど、言わないんだよ。好きとか嫌いとか。女なんてすぐ言うだろ?」

「聞けば?」

「聞けるか」

「じゃあ言えば?」

「言えるか」


あいつの頭の中覗きたい。そうぼやいた俺を、直哉はじっと見つめている。

「お前ら、そっくりだな」

その言葉の真意が不明だ。


「お前らって、俺とここか?お前何か知ってるのか?」

「守秘義務。言わないよ」

「ハゲろ」

「お前なあ」


はあ、と直哉が、小さくため息を吐く。

俺はそのことを気にも留めなかった。
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