俺様とネコ女
「めんどくせえな、お前」

でも顔は笑ってる。


「荷物これだけか?」

荷物を持ってくれる。言葉に反して、優しい表情、優しい行動に、ドキドキと、気持ちが高まっていくのを感じる。

今日は、楽しい1日になる予感がする。


「会社の用意は?」

「え?してない。今日も明日も泊まって良かったの?」

「まあいい」

「どうしたらいい?」

「どうにでもなる」


何がどう、どうにでもなるのかわからないけど、コウがそういうからそうなんだ。と私の迷いも消えるから不思議だ。


ナビをセットする、大きな手ときれいな指。うっとりと眺めながら、五十音の中から選択されていくひらがなを目で追う。


「水族館?」

「ネコと言えば魚だろ?」

当たり前だろ。と切れ長の瞳がものを言う。

私、ネコじゃないですけど。


「今日は反論しないのかよ」

「うるさい!」


今日くらい、人間…女として扱ってはいただけないだろうか。

コウといられるなら、行き先はどこでもいい。 コウが選んでくれたところなら、どこへだって行く。


私はただの、恋する乙女だ。
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