俺様とネコ女
水族館を後にし、近くの商店街を歩く。家族連れやカップル、観光客でごった返している。

「はぐれちゃいけないからね」

ここが腕を組んできた。 ぎゅ、と力を加え、ね?と念押しで微笑むここ。その瞳に吸い込まれてしまいそうになる。


「見て!お饅頭揚げてる。食べてみない?」

「無理」

「つまんないこと言わないでよ」

「お前も甘いもん食わないだろ」

「そうだね。でも珍しいからトライだよ」


駆けていき行列に並んだあいつは、振り返りおいでおいでと俺を呼ぶ。数分後、串にささった手のひら型の揚げ饅頭を口にして、ここが声を上げた。


「うわ、あま。食べてみて」

いらないなんて拒絶は関係ないらしい。無理やり口に入れられ、俺至上最高に甘いそれに驚愕する。

ここネコは終始ご機嫌で、にこにこと、笑顔がこぼれる。


俺もだ。
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