俺様とネコ女
「どれだけ引きこもれんの?」

「引くよ?」

「言え」

「大学にも行かずに、3日間ひたすらスマホで動画見てたことがある。4日目の朝、美咲に怒られて強制終了」

「何か嫌なことあったのか?」


男絡みではないかと探りを入れる。そんな俺の心とは裏腹に、ここはあっけらかんと答えた。

「全然。普通に、海外ドラマにはまってただけ」

「なんだそれ」

「知ってるかな。主人公が可愛い、二重スパイのドラマが面白くて、シーズン1からシーズン5まで一気見」

「アホだな」

「好きなんだもん。FBIとか、ニューヨーク市警とか。あーあ。やっぱり引いてる」

「いや。俺も海外ドラマは一時期よく見てた。最近は時間なくて見れないけど」

「…ありがとね」

ここに突然礼を言われる意味が分からない。無反応な俺に、もう一度、繰り返した。

「昨日も仕事だったんだよね。疲れてるのに、会ってくれてありがとう。私の誕生日を、一緒に過ごしてくれて嬉しい」

遠慮するような、申し訳ないような、そんな表情を隠すように、小首をかしげて微笑んだ。


もしも今、二人きりだったら。


ここに、好きだと、伝えていただろう。
< 228 / 337 >

この作品をシェア

pagetop