俺様とネコ女
ソファーから逃げ、玄関まで移動してから電話に出た。


「もしもし?」

思ったより声が響く。コウに聞こえるかもしれないと、声を最小限に絞る。


『こころ。久しぶり』

「うん久しぶり」

『誕生日おめでとう。今日誕生日だろ?』

「ありがとう」

『この前サダに聞いたんだけど、彼氏できたんだって?』

「あー、まあ」


曖昧な返事しかできない。祐樹に嘘をつくのは気がひける。コウは好きな人だけど、彼氏じゃない。


『待ってて欲しかった。俺はこころが好きだから』

「・・・・」

『サダに女できたら付き合おうって言ったのは、こころを繋ぎとめるための言葉じゃなくて本心だったんだ。俺たちもう戻れない?』

「祐樹…」

『こころ?彼氏のこと、ちゃんと好きなのか?』

「好き」

『女々しくてごめんな。本当は、おめでとうだけ言いたかった』

「うん。ありがとう」


あの日祐樹が、別れ際に言った言葉は嘘じゃなかった。けどそれがわかった今、祐樹に対して、何の感情も生まれてこない。

ただただ、コウをどれだけ想っているか再確認して、いつの間にか、両目から涙が溢れた。

コウに泣いてるところを見られたくない。早く泣き止まなきゃと、指で涙をぬぐう。
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