俺様とネコ女
「コウくんいらっしゃい」


店内に入ると、コウは迷わずカウンター右端に座った。

カウンターの奥でシェイカーを振る、あご髭が印象的な店員さんと顔馴染みらしかった。いらっしゃい。と私にも親しい笑顔を向け、コースターを並べる。


「生ふたつ」


コウのオーダーに、あご髭店員が小さく頷いた。

うーん。この人、前回も途中からコウと話してたっけ。それも覚えてないなんて、私、酔ったら記憶なくしちゃうんだ。覚えておこう。


前回も思ったけど、やっぱりこの店好きだな。客層が割と高めで、店内のインテリアもシックで落ち着く。

でも店員は全員明るくて、接客レベルが高い。


「コウくん。と、この前の子だよね」

「そうだけど」

「お揃いのメガネなんかかけちゃって…もしかして付き合ってる?」

「だったら何?」

「前回来たときは付き合ってなかったよね?」

「あの日会ったばっかりだった。さっきから何?」


サーバーから、グラスにビールを注ぎながら、いやあ。とコウから視線を外す。

なんだよ。と凄まれて、観念したようだ。
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