俺様とネコ女
「直哉さん、例の飲み会以降私と噂になってるでしょ?迷惑じゃない?」

ああ。と笑ったような、困ったような、どっちにもとれる表情を見せた直哉さん。

「直接聞かれたら付き合ってないって言ってるから大丈夫。それに今好きな子いないし」

「ほんと?」

「ほんとほんと。だから気にしないで」

「ありがとう」

直哉さんは優しいからそう言ってくれたけど、迷惑に決まってる。

いい会社に勤めていて、顔よし性格よしのハイスペックな直哉さんに、彼女がいないのが不思議でしかたない。

コウは性格に難ありだから、あの俺様男がフリーだったのは納得がいく。今となっては。


「年頃のいい男は、みんな売約済みだと思ってた」

「ん?」

「直哉さん、実は変態とか?」

「はい?」

「赤ちゃんになったりするの?それともいじめられたいとか?えーやだな。イメージ崩れる」

「いや。俄然ノーマルだから」


猫かぶり中だと気づき、大笑いしたいのをぐっと堪える。肩を震わせ笑い、腹筋が痛い。

直哉さんとは、エレベーターで別れた。


さあ。仕事だ。
< 264 / 337 >

この作品をシェア

pagetop