俺様とネコ女
秘書課の入り口ばかり気にしていた私は、ドアノブがガチャリと半回転したことにすぐ気づいた。

そこから顔をのぞかせた、隣の営業1課のエース。

目があっても、ニコリとも笑わない。


「来ると思った」

「チッ、じゃあな」

「ツンデレくん」


おいでおいでと手招きすると、お前が来いと顎で呼ばれる。稼働中の複合機から離れ、愛しの彼のもとに駆け寄った。


「お手」

「え、ネコもお手するの?」

「ついにネコだと認めたか」

「…くそオヤジ」

「あ?くそネコ」


睨みあって、笑いが込み上げ、笑いあう。背伸びをして、唇をペロリ、舐めてやった。1か月の締めくくりである、定例役員会議が、現在他フロアで開かれている。

例によって、私が1人で残業中だと分かっていて、会いに来てくれた。


「今日はAIで遊んでないのか?」

「秘書検の勉強始めたんだ!秘書の仕事、わたし結構好きみたい。だからせっかくだから極めたいなと思って」

「へえ、」

——と、内線音が鳴り、慌てて応対する。


「はい。秘書課、上野でございます」
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