俺様とネコ女
直哉さんは、駅を挟んで反対側にある居酒屋に連れて行ってくれた。
高い天井が開放的な店内。中央のオープンキッチンが眺められるカウンターに通された。14席ほどのカウンターはコの字型で、入口に背を向け、並んで座った。
生ビール2杯と、それから食べたいものを聞いてくれた上で、料理を何品か適当に頼んでくれた。
でも、箸をつけようとしない私に、何も言わない。何も言わずに、ただ、なんでもない世間話で、場を盛り上げ、和ませてくれた。
「でさ、笹山さんが、"秘書課の上野、もういいや。処女はめんどくさいから大沢に譲ってやるよ"って。あの人プライド高いから」
「笹山、ないわあ」
「こころちゃんは何課に希望出したの?」
「入社の時?」
「そうそう」
「第1は広報で、それ以外は何でも良くて、第2をなんとなく秘書課にした」
「広報か。向いてそう。ま、新入社員の希望なんて、聞くだけで、実際希望に配属されたって、聞いたことないから」
「そうなんだ。じゃ聞くなよ」
「言うと思った」
直哉さんは話題が豊富だ。楽しいんだけど、今日は心の底から笑えない。
高い天井が開放的な店内。中央のオープンキッチンが眺められるカウンターに通された。14席ほどのカウンターはコの字型で、入口に背を向け、並んで座った。
生ビール2杯と、それから食べたいものを聞いてくれた上で、料理を何品か適当に頼んでくれた。
でも、箸をつけようとしない私に、何も言わない。何も言わずに、ただ、なんでもない世間話で、場を盛り上げ、和ませてくれた。
「でさ、笹山さんが、"秘書課の上野、もういいや。処女はめんどくさいから大沢に譲ってやるよ"って。あの人プライド高いから」
「笹山、ないわあ」
「こころちゃんは何課に希望出したの?」
「入社の時?」
「そうそう」
「第1は広報で、それ以外は何でも良くて、第2をなんとなく秘書課にした」
「広報か。向いてそう。ま、新入社員の希望なんて、聞くだけで、実際希望に配属されたって、聞いたことないから」
「そうなんだ。じゃ聞くなよ」
「言うと思った」
直哉さんは話題が豊富だ。楽しいんだけど、今日は心の底から笑えない。