俺様とネコ女
翌朝、目を覚ますとここがいなかった。美咲の家に泊まると書き置きを残し、結局、今朝も戻ってこなかった。


事態を甘くみていた。まさか出ていくなんて思ってなかった俺の、与えられたダメージは甚大だ。

無理やり連れて帰って問い詰めたいのを、なんとか思いとどまった。


なにがあった?俺が何かしたか?寛大な心で、あいつが自分から打ち明けるのを待ってやってるのに。

ここと直哉が飲んでる?ここが泣いてる?

あいつらの共通点は、俺じゃないのか?



玄関のドアを開けてぎょっとした。真っ暗なそこに、ここがいたからだ。

ここも驚いていて、ぺたんとその場に座り込んだ。


「邪魔」

違う。こんなことを言いたいわけじゃない。それなのに、どす黒い気持ちが俺を襲う。

今まで直哉といたのか?二人で飲んで、何を話したのか?俺には言えないのに、直哉には言えるのか?

俺を避けるくせに、直哉の前では涙を見せるのか?
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