俺様とネコ女
「こっちこい」


ソファーに鞄を投げつけここを呼ぶ。恐る恐る近づいてきたここに、怒りをぶつけてしまう。


「なんで今朝も帰ってこなかったんだ」

泣き出しそうに顔を歪め、何も言わないここに苛立つ。


「お前、今まで何してた?」

「...直哉さんと飲んでた」

「なんであいつの前で泣いた?どうして会社で俺を避けたんだ」


あっと驚いた顔を覗かせた後、ごめんなさいと声を震わせる。

違う。お前を泣かせたいわけじゃない。

俺はただ、お前の口から、お前の態度が急変し、俺を遠ざける理由を聞きたいだけなんだ。いつものように、楽しそうに笑って、じゃれて欲しいだけなんだ。

「ごめんなさい…」

「ごめんじゃないだろ。お前最近何なんだ。言いたいことあるなら言え」

ぽろぽろと、大粒の涙を流すここが、ゴクリ、生唾を飲んだ。


「今は言えない」

「ふざけんな。勝手に出て行って人のこと避けて、ほかの男の前で泣いて。どっか行け!」

しまった言い過ぎた。そう思った時、ここが俺の前から逃げ出した。

慌てて追いかけて、玄関前で捕まえて抱きしめた。
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