俺様とネコ女
「悪い。言い過ぎた」


腕の中で、ここが嗚咽を漏らす。

「本当に、まだ言えないの。でもわかって。コウが好きなの。大好きなの」


ここがこんなに泣くなんておかしいだろ。こいつ。こんな女じゃない。

泣きながら、好きだと繰り返す。まだ言えないって、どういうことだ。

ここは俺を好きだ。

そのことに不安はない。


別れたがってるようには見えない。何がここをこんなに苦しめるのかわからない。子供のように泣きじゃくるここを、抱きしめることしかできなかった。


「もう泣くな」

うんうんと、頷きながら胸に顔をこすりつける。


「風呂入るか」

何も言わず頷くここをバスルームに連れて行き、服を脱がせる。


「お前痩せた?」

「ご飯欲しくなくて」

「美咲の家で酒ばっかり飲んでたのか?」

「お酒もいらない」


元々、華奢できれいな鎖骨が、どこか頼りない。

あのここが、酒がいらない?
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