俺様とネコ女
ここ———…


恐らくあいつは、役員会議でこのことを知った。まだ伏せておけと言われ、誰にも言えなかった。

もちろん、当事者である俺には特にだ。


ここの異変に気付いた俺に、どうしたのかと詰め寄られても、しゃべるわけにはいかない。それで俺を遠ざけていたのか。

言えない上に、俺は東京に行く。それで、あんなになってたのか。


"まだ言えない。でもわかって。好きなの、大好きなの"は、そういうことか。



恐らく直哉は知っていた。ここは言わないだろうから、美咲経由で直哉の耳に入って、それで直哉の前で泣いたのか。


全ての辻褄があった。


ベンチの横に置いた、分厚い封筒を手に取った。



重い。



もう一度頭を抱え、溜息を吐いた。
< 291 / 337 >

この作品をシェア

pagetop