俺様とネコ女
考えろ。俺はどうするべきか。何を選択するのが正しいのか。


ここは唯一無二の存在だ。

離れたくない。手放したくない。誰にも渡せない。


大人はマジでめんどくせえ。したいようにさせてくれ。余計なことは一切考えずに、願望だけで行動できれば、どんなに楽か。


俺はここを連れていきたい。どうにか会社を辞めさせずに連れては行けないかと思案する。

あいつが、仕事が楽しくなってきたと、笑顔で報告してくれたことを思い出す。

うちの会社には『キャリアチャレンジ制度』という、意欲と実績、資格がある者に対し、希望の部署へ転属願を出すことが出来る制度がある。

ただそれは、支社内異動の話であって、本社は対象外だ。それに、勤務年数2年以上である条件もある。あいつは該当しない。


あいつは地頭がよく、頭の回転が速く機転が利く。このまま真面目に働けば、いい秘書になるだろう。秘書だけじゃない。転属になって、どこの部署に配置されたとしても、目を見張る活躍をするだろう。


いい大学を卒業して、大手企業に就職したばかりのあいつの将来を、俺のわがままで奪っていいのか。


第一、あいつはもう離れることを決めているのかもしれない。


一週間考える時間があった。考えるだけ考えて、泣いて。


覚悟を決め、心の整理をつけたのかもしれない。
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