俺様とネコ女
「ほんと俺様。横柄だよ」

「あ?」

「大人になりなよ」

「降りろ」

「降りないよ?」

「知ってる」


ふっと、口端に笑いを浮かべたその顔が、とても優しくて。


「今の顔画像に残したいから、もう一回笑ってよ。ほら、ニコって」


舌打ち、のち、無視。うん。これでいい。コウとの会話はこうでなくちゃ。


車が動き始めたとき、コウに違和感を覚えた。今笑みを浮かべた口端が、赤く変色しているように見えたのだ。

でもそれは、夕日に照らされているだけだと、さほど気に留めなかった。

< 301 / 337 >

この作品をシェア

pagetop