俺様とネコ女
「今朝お前が1課に来たとき、ただならぬ空気纏ってて動揺した」

「コウでも動揺するんだ。でも私も専務にコウ呼んでこいって言われて、何で私?自分で行って!って思った」

「それがお前の仕事だろ」

「そうなんだけどね」

笑いながら、コウの肩に頭を預けた。私の両手を包んでくれるコウの手の、浮き出た血管を指先でなぞる。くすぐったそうに逃げる手。離れないでと指を絡める。


「コウ凄いよね。専務に"わが社を代表してお礼を"なんて言われて。凄い凄いと噂では聞いてたんだけど、早瀬コーポとの契約って、すごく大変だったんでしょ?獲れるかどうか、微妙だったの?」

「俺が頑張ったんだぞ?獲れないはずがない」

「さすがコウ様、謙虚なご発言」

「うるせえよ」


———来た…

笑っているのは私だけだった。コウに笑顔はない。真剣な眼差しに捕われ、ごくりと喉を鳴らした。


空気が、変わった。



「ここ。お前どうしたい?」

言わなきゃ。


どうしよう。怖くて声が出ない。
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