俺様とネコ女
手を組み替えて、ぎゅっと握ってくれる。


「震えるなよ」

そうなんだけどね、怖気づいちゃってるの。震えが、止まらないの。


「しゃべれるようになるまで待つから」


言うって決めてたのに。覚悟決めてたのに。一言が、言えないでいた。


呼吸が聞こえそうなほど、私たちの間に、静けさが留まる。


「…ぎゅってして?」


何も言わず抱きしめてくれた。胸に頬を寄せる。ワイシャツ越しに鼓動を感じる。

後ろに回った手が髪の毛を撫でてくれて、徐々に心が落ち着きを取り戻した。


よし。

もう言える。


コウの目をしっかり見て、伝える。



「コウと一緒にいたい。ついて行きたい」

「おりこう」


優しいような、ニヒルのような笑顔を一瞬浮かべたと思うと、ポンと頭に手を置いて立ち上がるコウ。

私はぽつん、ソファーに取り残された。


え。私の一大決心に対して、それだけ?

おりこうって!


苦情を訴えようと立ち上がろうとした時。


鞄から何かを取り出し、戻ってきたと思ったら、私の前に、ひざまずいた。
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