俺様とネコ女
公衆の面前でカップルたちがいちゃつくのは、見るのもするのも嫌いなのに。実はかなりの確率で、私から腕を組みにいってるかも。…かもじゃない。確実に自分からいってる。

コウに出会ってから、自分のキャラがどんどん崩壊していく。

うわあ。私、ヤバすぎん?


コウの横顔を眺めると、今まで気にならなかった口元の傷が気になり始めた。山本主任に言えなかったのはコウの優しさ。それなのに、結果的に最悪の形になってしまったのが本当に悔やまれる。

私は主任にどれだけ嫌われてもいい。でも、コウと主任の仲はこじれませんように。


「事情を知らなかったとはいえ、あの時キレて悪かった」

「ううん。私こそごめん。キャパオーバーしちゃって、直哉さんに不安ぶつけて、」

「美咲が直哉にお前を助けてやれって頼んだんだろ?今日、昼間直哉から聞いた」

「あ、そうなんだ」

「…直哉は、」

「直哉さんが、どうかした?」

「いや」


相変わらず口端が傷むようで、そこを指で触れたまま、黙ってしまった。

コウはそれきり口をつぐみ、ビールを一気に飲み干し、ビールのおかわり2杯と、料理を何品か注文してくれた。
< 313 / 337 >

この作品をシェア

pagetop