俺様とネコ女
「笑われる前に自己申告しとくね。私猫舌だから。もうちょっと待たないと飲めないから」

無遠慮に大笑いされた。だから自己申告したのに。

「おい。ここネコ。にゃーって鳴けよ」

「にゃー」

「鳴くのかよ」

「シャー!」

「威嚇かよ」


2人の笑い声が部屋に響く。こんなに楽しそうに笑う顔が見れたのだから、ネコ扱いもまんざらじゃない。


「ねぇ、なんでブラックってわかったの?」

「別に」

はぐらかされたけど分かる。私たちは好みが似ている。そしてコウも、そう感じてることを。


「コウ料理しないでしょ。キッチン綺麗。使用感ゼロ」


キッチンだけじゃなくて部屋。一人暮らしにしては広すぎるこの部屋は、極端に生活感に欠けている。

水とアルコールのための冷蔵庫。食材はおろか、必要最低限の調味料さえ見当たらない。

テレビ、黒い革のソファー、ガラス製のローテーブル。それと、大きなベッド。

この部屋が寝るためだけの場所だって物語っている。


「お前は?」

なんと答えるべきか。誰かがいれば作る。実はこう見えて結構何でも作れる。でも、自分だけなら、めんどくさいから作らない。
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